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チャン・ユンチア「水域」

 この度Art-U roomでは、マレーシアの現代アーティスト、チャン・ユンチアを迎え、当ギャラリーでの初となる個展を開催致します。

 

 「水域」と題された本展は、油彩画16点に流木を用いた彫刻1点を加えた新作17点で構成されます。それぞれの作品には、チャンの幼少期の思い出や空想からマレーシアの歴史や時事問題に関するものまでヴァラエティに富んだ題材が寓話風に描かれていますが、更に詳しく見ると、個々の作品は「水」という共通項によって結ばれていることに気付きます。それはかつて祖先たちが移民として渡ってきた海であり、また内陸の原生林を流れる川や滝、更には熱帯地方特有のスコールや湿気など、あたかもあらゆる場所に浸透し姿を変えながら循環する「水」に導かれながら、場面ごとに様々な表情を見せる「水域」を巡るイマジナリーな旅へと、見る者を誘うかのようです。

 

 チャンはこれまでに、新聞の死亡記事欄に掲載された見ず知らずの人々の死を悼むために故人の肖像画を刺繍で縫い上げる「追悼の刺繍 Quilt of the Dead」(2002年より現在も続く)や、古切手を素材としたコラージュで過去に生きた市井の人々の人生の軌跡を辿る「不滅の恋人 Immortal Beloved」(2012~13年)といった作品を発表してきました。これら無名の人々にスポットを当てた作品群からは、歴史という大きな物語の陰に埋もれた人々の記憶の断片を掘り起こし、彼らのナラティヴを再構築することによって、出来事の持つ意味や多義性を見つめ直そうとするチャンの姿勢が感じられます。あるいはまた、このプロセスには、中国系ディアスポラとしてマレーシアという多民族国家に生まれ育ったチャン自身のアイデンティティ探しの物語が重ね合わされているのかもしれません。

 

 

■ チャン・ユンチア(Chang Yoong Chia)

 1975年クアラルンプール生まれ。1996年マレーシア芸術学院卒業(絵画専攻)。現在クアラルンプール在住。近年の主な展覧会は「Open Sea」(2015年、リヨン現代美術館、フランス)、「Re:engage: The People’s Court」(2014~15年、ペナン、マレーシア)、「Immortel Beloved」(個展、2013年、Richard Koh Fine Art、クアラルンプール、マレーシア)、「The Botany of Desire」(個展、2012年、1Shanthiroad Studio、バンガロール、インド)、「APB Signature Art Prize 2011 Finalist Exhibition」(2011年、シンガポール美術館)他。日本では「Welcome to the Jungle 熱々!東南アジアの現代美術」(2013年、横浜美術館および熊本市現代美術館)、「第3回福岡アジア美術トリエンナーレ」(2005年、福岡アジア美術館)への出展があり、S-AIR(2008年、札幌市)、wanakio(2008年、那覇市)でのアーティスト・イン・レジデンス滞在経験がある。

 

作家ウェブサイト:

http://www.changyoongchia.net/

 

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会 期: 2016年2月5日 [金] 〜 28日 [日] 

火 - 土 12:00-19:00 日 12:00-17:00 月・祝休

■ オープニングレセプション:2月5日 [金] 18:00-20:30

協力:Richard Koh Fine Art

 

[ プレスリリース(PDF) ]

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